2008年11月12日水曜日

DTP作業効率の向上努力と品質の関係

うちだけなんでしょうか。。。

新人君が作成した図版が校正を通らずにそのままお客さんのところに行ってしまって、初校戻りのゲラが真っ赤っかで戻ってきました。
本人も落ち込んでいるわけですが、問題はどこにあるんでしょうか、ちょっと考えてみました。

この話が持ち上がったときに出た言葉は、だいたい次のようでした。
1.まず、「これでいいですか」と聞かなかった図版作成者が悪い
2.図版作成者に頼むときに、ちゃんと指示しなかった作成依頼者が悪い。
3.仕上がった図版データをちゃんと見ずに貼り付けた組版オペレータが悪い
4.内校を飛ばして、納品してしまった営業が悪い

僕が思うのは、これは、印刷事故に匹敵する制作業務における重大な過失であります。
印刷事故をここでは印刷された後に発覚する間違いとします。これはこれであってはいけないことですが、印刷物として残りますので、「注意して作業します。。。」という反省文も付いて事故報告書として扱われると思います。
しかし、制作を生業の中心としているうちにとっては、制作作業中におけるこういった問題の方が重要度は高いです。なので敢えて過失と言っています。

誰が悪いとかいう問題ではなく、会社全体の問題です。

この問題が引き起こしたものは時間的損失信頼低下です。
制作業務は、作業工賃でご飯を食べさせてもらっているわけで、作業時間を如何に削るか、つまり如何に効率よく作業するかが重要です。
ページ単価の中には、一定水準の品質を保つための料金が含まれているわけで、その単価に見合う時間でやる努力をしなければいけないわけです。とんでもない品質を通常品質にするための修正時間、校正時間など含まれているわけがありません。むしろ通常品質からさらに品質を上げる努力をしなければいけません。

そこで、「うん、分かりました。効率よく作業をしなきゃ!」と考えたときに、「作業を分担すりゃいいじゃん」ということがアタマに浮かびます。

「あんたはこれやって」「オレこれやるからさ」

この言葉だけで、高い品質が保てるのは、
・かなりの経験と上級の技術を持っているオペレータ同士
・組版センス、デザインセンスを持っているオペレータ同士
・普段お互いの作業の仕方、仕上がり具合を熟知し合っているオペレータ同士
だけです。

こういう中でやっと、「効率化」というのが生まれるわけです。
効率化とは、マニュアルを作り、それ通りにすることが全てではありません。
作業がマニュアル化されたところで、それは基本線であって、効率化の大前提とする部分ですから、その上にある「品質を守る、向上する努力」を忘れてしまっては、何も意味がない、効率化なんて出来るわけがない、ということです。

「出来るオペレータ」の中では、何を作るときでも「高品質」が当たり前であり、そのためには、何が必要か、何をしてはいけないか、ということを今ままでの痛い経験や新旧の技術から知っています
効率よくやることが、品質を上げる、ということを知っているわけです。
もうちょっと違う言い方にすると、
品質を上げるためには、どうやって効率よくやるのがいいのか、ということを常に日頃考えている、ということです。

前述したように、制作作業は、作業工賃をいただく仕事です。すごい時間をかければ、ちゃんとできるかもしれません。でもそんな「すごい時間」にお金を払ってくれるお客さんはいません。だって、出来ない人、出来る人に、頼んだときに、お客さんは最終の仕上がりが同じであればいいわけです。出来る人が1時間でやった仕事を、できない人が5時間かかった、というとき、じゃあ出来ない人が多く工賃もらえますか、っていうと「そんなんありえへん」ですよね

よく言うんですが、制作作業というのは、「効率よく」やることが前提の仕事なんです。
でも、この「効率よく」が何のためかというと、「品質を上げる」ことなのです。

そうはいっても、社内では、技術の差、経験の差は必ず存在します。
市販の教則本だけでできるようになる仕事ではありませんし、ある部分だけをちょこちょこやって「おいらはDTPオペレータだぃ」と言うのもありえません。
教える側もそうです、基礎を教えたところで「よしもう一人前だな」なんてこともありません。

先ほどの仕事を始めるときのやりとりが、この差があるオペレータ同士でなされた時、どんなことが起こるでしょうか。

・頼んだ人のイメージと、仕上がりのイメージが「なんか」違う
・頼んだ方は、分かっていることを前提に渡したのに、「意外と」分かっていないかった
・「想像以上に」時間がかかっている

多分、こんな感じだと思います。
こういう状態では、効率化も図れないし、品質も上がることはありませんし、かえって品質の低下、時間超過などの問題を引き起こします。

じゃあ、仕事を頼むとき、頼まれるときにするべきやりとりの内容をマニュアル化して、実行しよう、というのもちょっと違います。そういう話し合いも必要だとは思いますが、それをやってしまうと、マニュアルが中心であり、この問題の解決が「マニュアルを作ること」に意識がいってしまい、「マニュアルが完成したらこの問題は解決だ」と、勘違いをしてしまいます。問題が発生する根本的な原因は、もっと違うところにあるはずです。

全く一緒の作業で出来る仕事であれば、そういったマニュアルの徹底によって、何も問題ないんですが、制作作業はそうではありません。

日々の仕事において、様々なタイプの作業が流れてきます。日々流れている仕事の中で、どのようにすればよいのでしょうか?

それは、常に、お互いが品質を上げる事を目的として、

・お互いの経験と技術を理解する
・お互いの組版センス、デザインセンスを理解する
・お互いの作業の仕方、仕上がり具合を理解する

ことができれば、制作作業という現場の中でコミュニケーションしながらお互いに成長を目指せる。これがDTP制作の仕事の中で最も重要なことであり、品質の向上、効率化が達成できるのでははいでしょうか。

つまり、品質を守る、向上するという、仕事をもらって作業するにあたって一番最初に考えないといけないことの上に、効率化があり、そしてそれを作り出すのは、それぞれの作業者が周りとの理解を深め、相乗的に技術の向上を図ることではないでしょうか。

そして、こういうことがあるからこそ、制作作業は、面白い仕事になるんじゃないでしょうか。

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